■効果その1■■■■■■
タイヤ温度が上昇しても内圧があまり上昇せずグリップ力の変化が抑えられる
窒窒素も酸素も二酸化炭素も膨張率は同じ。ボイルシャルルの法則書きます。
P x V=N x R x T
P : 気体の圧力
V : 気体の体積
N : 分子数
R : 気体定数 8.314472J/mol K
T : 気体の絶対温度
気体なら膨張率は同じなので、窒素だと圧力が上がりにくいということはありません。
しかし、空気には水分が含まれています。
空気に含まれる、飽和水蒸気量は
温度10度の時 9.41g/m^3
温度30度の時 30.38g/m^3
タイヤに入る気体は30リットル(0.03/m^3)くらいなので
10度で 0.28g
30度で 0.91g
湿度40%だと
10度で 0.11g
30度で 0.36g
ほんのわずかです。
この水分は、水蒸気のとして含まれているので熱膨張率は、窒素や酸素と同じです。
しかし、圧力をかけると露点は上がり、空気中の水蒸気が液体の水に戻ります。
液体の水が高温になると気化します。
気化すると体積は1700倍に膨張します。
0.05gの水から約85リットルの気体が生まれます。
30リットル程度のタイヤ内部に85リットルの気体が発生すると、3kgf/cm2( 約300kPa)くらい圧力が上昇してしまいます。
窒素ガスは、製造の過程で、ほとんどの水分が除去されていますので、水の心配がありません。
ただし、200kPaの時の水の沸点は約130度なので、普通の走行で水が沸点に達しする心配はないと思います。
普通の走行ではない、レースでは、F1の場合タイヤの最適温度は80から100度だそうですので、120度くらいはいきそうです。
でも、水分さえなければ良く、窒素である必要はないので、空気から水分を除去した「ドライエア」をレースとかでは使っているそうです。
内圧上昇抑制の観点からは、窒素の必要性はあまりないようです。
■効果その2■■■■■■
水分を含まないので、内部の腐食や変質を起こさないこと
ホイールやバルブの腐食や変質が心配なら窒素やドライエアが良いかもしれません。
航空機用タイヤには,窒素ガスが充填されています。
その理由の一つも、水分を含まないことから腐食や変質を起こさないことです。
■効果その3■■■■■■
航空機で窒素を充填するもうひとつの理由は、「摩擦熱で高温になるが,火災や爆発の危険性を回避できる」こと。
発火が心配なら、もちろん窒素ですが、バイクでタイヤの発火が心配ほど過酷な状況は無いと思います。
ジャンボ機は、30秒程度で時速300kmまで加速して離陸し、時速300キロでフル制動して着陸します。
車の制動距離は 「JIS D9301 一般用自転車」が規定している制動距離を元に計算すると400から600m(乾燥路面と水濡れで異なる)程度になります。
500mもフル制動続けられるならタイヤ燃えるかもしれません。
■効果その4■■■■■■
空気がぬけにくい
窒素も酸素も、分子としての大きさは微妙な差しかありません。
窒素 ファンデルワールス半径 155 pm 原子間距離 110pm
酸素 ファンデルワールス半径 152 pm 原子間距離 120pm
しかし、酸素透過係数(=溶解係数×拡散係数)は、窒素透過性より大きくなっています。
酸素透過性
25度 50度 ゴムの種類
0.2 - 0.6 ブチルゴム
2.0 - 5.3 スチレン・ブタジエンゴム
2.8 - 7.2 天然ゴム
6.1 - 7.6 シリコンゴム
窒素透過性
25度 50度 ゴムの種類
0.03- 0.2 ブチルゴム
0.8 - 2.2 スチレン・ブタジエンゴム
1.0 - 2.9 天然ゴム
3.1 - 4.4 シリコンゴム
これは、気温25度の時と50度の時の透過性を、25度の時の天然ゴムの窒素透過性を1とした相対値です
各種ゴムの酸素透過率は窒素透過率のザックリ2倍から3倍です。
特にシリコンゴムの酸素透過性は良好です。
このため、酸素を透過するコンタクトレンズには、酸素透過性を天然ゴムの30倍程度に高めたシリコンゴムが使われています。
シリコンゴムはタイヤにも使われています。
シリカ100%のコンパウンドを使ったタイヤが、ミシュランやブリジストンから発売されています。
シリカなので白いタイヤになるはずですが、紫外線対策として黒くしてあるので見分けはつきません。
シリカ配合率の高いスタッドレスタイヤなどには、窒素おすすめかもしれません。
しかし、空気抜けを抑制するために、タイヤには通常インナーライナー層があります。
インナーライナー層には、塩素化ブチルゴムや臭素化ブチルゴムが使われています。
ブチルゴムは、酸素透過率が低いゴムの代表格です。
インナーライナーの他にも、タイヤのチューブやバルブ、パッキンなどにもブチルゴムが使われています。
ちなみに、航空機のタイヤ圧は、1200~1400kPa
2.00kgf/cm2( 約200kPa)前後の二輪タイヤの6~7倍もあります。
窒素を充填して抜けにくくしておく必要性も高いのかもしれません。